超高度に『医デジ化』された社会の実現

小泉 憲裕
(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 准教授)

2022年10月5日水曜日

International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IJCARS)誌に周 家禕さんらの投稿論文が掲載されました

医療用AI・ロボティクス分野のトップジャーナルである International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IJCARS)誌に周 家禕さんらの投稿論文がオンラインファーストで掲載されました。横浜市大センター病院 沼田和司先生、東京大学医学部附属病院 月原弘之先生、日本大学の小川眞広先生、松本直樹先生、産業技術総合研究所 葭仲 潔先生、津村遼介先生、大林製作所 飯島秀幸社長、岩井敏行様、永岡英敏様らとの共同研究プロジェクトの成果であり、われわれが推進する『医療診断・治療技能のデジタル化』に関するものです。ひきつづき大変お世話になりますが、ご助言・ご指導・お力添えをたまわりますようどうぞよろしくお願いもうしあげます。

Jiayi Zhou, Norihiro Koizumi, Yu Nishiyama, Kiminao Kogiso, Tomohiro Ishikawa, Kento Kobayashi, Yusuke Watanabe, Yusuke Watanabe, Takumi Fujibayashi, Miyu Yamada, Momoko Matsuyama, Hiroyuki Tsukihara, Ryosuke Tsumura, Kiyoshi Yoshinaka, Naoki Matsumoto, Masahiro Ogawa, Hideyo Miyazaki, Kazushi Numata, Hidetoshi Nagaoka, Toshiyuki Iwai, Hideyuki Iijima, "A VS ultrasound diagnostic system with kidney image evaluation functions," International Journal of Computer Assisted Radiology and Surgery (IJCARS)https://doi.org/10.1007/s11548-022-02759-0, 2022. IF=3.4 

<要旨>

超音波診断の特徴は、生成される超音波画像の質が、プローブを操作する医師の技量に依存することである。これは、患者の呼吸や拍動等により常に変位・変形・回転をともなって運動する臓器の断面を安定的に獲得するために、医師が常にプローブの位置・姿勢・押しつけ力を調整しなければならないためである。上記を踏まえて、医師の負担を軽減するために、ディープラーニングに基づくビジュアルサーボシステムと協調して動作するロボティック超音波診断支援システムを開発した。

今回開発したロボティック超音波診断支援システムは、臓器追跡ロボット(OTR)、ロボティックベッド(RB)、ロボティック支持アーム(RSA)の3つのロボットから構成されている。また、異なる画像処理方法(YOLOv5s、BiSeNet V2)を用いて、目的の運動臓器の位置を検出し、得られた超音波画像の適正度を評価する(ResNet 50)ことができる。最終的に、医用画像処理結果はOTRに送信され、動作指令され、運動する臓器に追従する。

実験では、運動軌道をなめらかに推定することができる、カルマンフィルタリングを併用することで動物体の検出に最適なYOLOv5sが最も高い追従精度(0.749)を示し、フィルタリングを行わない場合と比較して精度を約37%向上させることに成功した。さらに、追従中に得られる超音波画像の適正度も最も高く、安定的に診断画像を獲得・維持・適正化することができた。2番目に高い追従精度(0.694)を実現したのは、追従対象臓器の重心位置や腎臓の断面積、最大径といった形状特徴量を計測するのに適したBiSeNet V2のカルマンフィルタリングによるもので、フィルタリングを行わない場合と比較して75%追従精度が改善された。

YOLOv5sとカルマンフィルタリングの組み合わせが最も効率的な追従を達成したが、BiSeNet V2とカルマンフィルタリングの組み合わせは、より実際の腎臓の運動状態に近い腎臓重心を検出することが可能である。さらに、対象となる臓器の断面積や最大径などの詳細な情報もリアルタイムに計測できるため、実際の診断や治療モニタリングにおいて、より実用的なモデルであるといえる。

本手法の適用範囲は単に医療診断のみにとどまらず、がんや結石を対象とする超音波・放射線・重粒子線治療用ビームの照射モニタリングにも応用展開することができ、将来のAI・ロボティック医療診断・治療のためのデジタル基盤技術として強く期待されている。