超高度に『医デジ化』された社会の実現

小泉 憲裕
(電気通信大学 大学院情報理工学研究科 准教授)

3. 超音波画像による生体患部追従の問題点と解決策

目標精度

HIFUの照射対象として、『結石』と『がん』がある.まず、『結石』が追従できることを目標とした。これは、結石は,超音波画像上で輝度が高いため位置の同定がしやすいと考えたからである。

The focal lesions, which should be tracked and followed, are "stones" and "tumours".

 つぎに、『結石』の追従がある程度できるようになってきたので『(腎臓)がん』についても対象としようということになった。がんは超音波画像上で結石のように輝度が高いという目印がないので、まずは追従のために腎臓の形状(輪郭)情報やテクスチャ(模様)情報を利用するアプローチを採用した。

輪郭情報やテクスチャ情報を利用した手法は、『結石』にも『(腎臓)がん』にも応用できる手法である。『結石』および『がん』の両方に追従できることが本研究プロジェクトにおける最終目的であり両方の目標精度を検討している。結石については直径4mm以下の結石は尿から体外に自然排出されるため直径4mmの結石を追従しながら正常な組織を極力損傷することなく強力集束超音波(HIFU)を照射できることが目標になる。

具体的に,HIFU照射対象の結石の直径が4mm(半径は2mm),照射するHIFU焦点の直径が1mm(半径は0.5mm)である,これより,照射するHIFUを照射対象である4mmの結石の領域におさめ,まわりの正常な組織を傷つけないための条件は,結石の形状を球と仮定して(結石の半径)-(HIFU焦点の半径)=2mm-0.5mm=1.5mmになる.

がんについては,一般に,放射線治療において,放射線照射対象である腫瘍の領域のまわりに5mmのマージンをとることが知られている.本研究では,(微積分におけるε-δ論法よろしく)この5mm(ε-δ論法におけるε)のマージンの半分である2.5mm(ε-δ論法におけるδ)を目標精度として設定している.

上記のように,目標精度は結石が1.5mm,がんが2.5mmと値が異なる.そこで,がんにも結石にも応用可能な手法の開発においては,まずは『がん』の目標精度である2.5mmを達成することを目指し,つぎに,『結石』の目標精度である1.5mmを達成することを目指す.

2.5mmの誤差は超音波画像上の±50mmのROIで角度誤差に換算すると2.5度程度となる。このことから、申請者らは位置誤差2.5mm、姿勢誤差2.5mmを一定の精度指標として想定している(ニコニコ・インデックスと呼ぶことにする)

肝がん治療における目標精度に関して

 誤差についてですが、臨床医の大多数は、理想的には1mm以下の精度を求めると思います。それは、腫瘍が肝臓の表面に存在し、消化管に接している場合、1mmでも消化管側にいった場合、致命傷になる可能性があるからです。

 しかし、腫瘍が肝臓の表面でない場合は、5mmくらいの誤差があっても、できるだけ局所再発率を下げたいという意向もあって、5mmくらいのマージンをもって安全にむしろ広く焼けたほうが、局所再発にはいいと考えます。従って、消化管に接した、非常に難しいところを焼くには、1mm以内の精度で、しかも、患者さんに、呼吸止め等の安全策をもって焼き、肝臓内部の安全なところは、5mm程度の精度でも、呼吸を自由にして広めに焼いてもかまわないということになると思います。(横浜橋クリニック 福田浩之先生)

超音波診断画像による生体中の患部抽出・追従・モニタリングの問題点と解決アプローチ法

超音波診断装置はMRIやX線装置といった他の画像診断装置と比較してリアルタイム性や扱いやすさの点で優れる。他方、超音波画像はその測定原理上、様々な種類のノイズ要因を有する。

本研究プロジェクトを遂行するにあたって、最大の難所となるであろう超音波診断画像による生体中の患部抽出・追従・モニタリングの問題点とこれを解決するためのアプローチ法について示す。図に示すように、たとえばHIFUによる生体中の気泡発生や追従対象(腎臓結石/がん)と同様のインピーダンスを有する背景等により、患部抽出・追従・モニタリングのための超音波画像の質が劣化する。

患部抽出・追従・モニタリングのための超音波画像の質を劣化させるノイズ要因は下記の6点である。

(NF1) スペックルノイズ(ランダムな小点群)、
(NF2) 臓器変形、
(NF3) 肋骨などによる音響シャドウ、
(NF4) 超音波画像平面に垂直な方向の運動、
(NF5) まぎらわしい組織/気泡(HIFU照射によって発生する)、
(NF6) 機構部の振動。

(NF1) speckle noises (random bright spots)
(NF2) organ transformation.(注)
(NF3) artifacts such as acoustic shadows by rib bones, etc.
(NF4) out-of-plane organ motion.(注)
(NF5) confusing surrounding tissues/bubbles, as generated by HIFU itself.
(NF6) oscillation of mechanical system.

(注)

論文投稿に際してネイティブの英文校正を受けたところ、『臓器の変形』、『臓器の運動』は『organ transformation』、『organ motion』 が適切とのこと。

上図に示すように、上記のさまざまなノイズ要因により患部抽出・追従のための超音波画像の質(image quality:IQ)が劣化する。この劣化が追従誤差増大の原因となり、さらなる画像の変質および振動を引き起こし、これがまた、追従誤差の増大を招く。一方でこの事実は何らかの方法で追従精度を向上することができれば、劇的に追従精度を向上させる可能性があることを示唆する。

本研究プロジェクトでは、我々の研究グループが開発してきた独自のコア技術を基盤として上記の課題を克服する。具体的に、追従誤差を最小化するというアプローチと追従誤差の影響を低減するというアプローチの両面から、上記の問題に取り組むことで効率的な治療および患者にとって安全・安心なシステムの構築を目指す。

(コラム)
ノイズファクターは追従における問題点であるが,ノイズの高い領域を色で示せると面白いかもしれない.たとえば,超音波画像のピクセルごとに,輝度値の分散を色で示すなど,Open CVを学ぶ際の例題としておもしろそう,,,

(コラム)
心臓、肝臓、腎臓といった臓器はいずれも概周期的に運動(変位・変形・回転)を行なう臓器である。これらの臓器に運動を与えるのは横隔膜(筋膜)や心筋といった筋肉であり、ロボットで言うところのアクチュエータにあたる。心臓の運動は臓器内の組織である心筋が生成するため、より能動的であり、肝臓や腎臓の運動は臓器外の組織である横隔膜の運動により、受動的に生成されるものである。

運動の特徴としては、心臓の重心位置の運動自体は比較的小さく、同じ場所で収縮・変形をおこなう。他方、腎臓や肝臓については重心が大きく運動し、収縮・変形は比較的小さい。臓器は体内でほかの臓器と『押しくらまんじゅう』をしていると考えればイメージしやすい。互いに拘束しあったり、作用・反作用を及ぼしあいながら、動力学にもとづいて概周期的な臓器運動(変位・変形・回転)が生成される。因果律としては、呼吸による横隔膜の運動が周囲の臓器の呼吸性運動・変形を生み出す。拍動についても同様である。

呼吸性臓器運動と拍動性臓器運動はともに概周期的な運動を与えるが、両者の大きな違いは、呼吸性臓器運動が患者さんに『呼吸を止めてください』とお願いすることで、ある程度制御できるのに対し(喘息などで呼吸の制御が困難な場合もある)、拍動性臓器運動は『拍動を止めてください』とはお願いできないことである(薬剤などを用いればある程度拍動を遅くすることは可能である)。



超音波画像による生体患部追従の問題点と解決策




超音波医用画像にはストライク・ゾーンが存在する

超音波医用画像においては、視野(超音波プローブの視線、スキャン面、視野角)が3次元ユークリッド空間内に埋め込まれた2次元ユークリッド面内で扇(おうぎ)状に制限されている。このため、プローブのスキャン面内の物体運動については捉えやすいが、面外の物体運動については捉えにくい。また、深部になるほど超音波の拡散・減衰によりSN比(Signal to Noise Ration)や解像度が低下してしまうため、物体の運動(変位・変形・回転)が捉えずらくなる。

さらには超音波ビーム・フォーミングの際のフォーカス・ポイント設定についても考慮が必要である。すなわち、超音波スキャン面内で(超音波診断画像の中央部付近に)ゴールデン・ストライク・ゾーンが存在しており、そのなかに観察対象物(臓器内に埋め込まれた患部)を包含する関心領域(ROI:Region of Interest)を設定し、画像のブレやノイズを極力抑えた状態で捉える必要がある。


超音波の反射と音響インピーダンスの整合性(マッチング)

超音波ゼリーの表面(空気との界面)、液面(空気との界面)、水槽のアクリル板(水との界面)、骨などの固い組織(軟部組織との界面)といった、『界面(かいめん)』においては、一般に音響インピーダンス整合性(マッチング)が低いため音波がこれより先にはほとんど進めなくなり(透過係数は小さくなっている)、行き場を失った音波は反射して引き返すしかなく、したがって(音響)反射係数が高まっている。

すなわち、(音響)反射が生じているところには何らかの硬い組織あるいは何らかの界面が存在しており、音波がよく反射するためプールの壁よろしく固定端に近い境界条件になっていると推察される(ここで、音波は縦波(たてなみ)であるため、変位を時計回りに90度回転させて表示すると直観・幾何学・野性的に把握しやすい)。固定端では、フーリエ正弦級数で表現される(ディリクレの)境界条件(y(※)=0)となっている。

超音波エコーは音波の跳ね返りである音響エコー(Acoustic echo)を画像化するので、このような界面において超音波画像上の輝度が高まっている(High echo 領域)。他方で、透過率の高いところや、硬い組織の先においては反射波が十分に得られないため輝度が小さくなっている(Low echo領域)。

具体的にたとえば横隔膜(おうかくまく)などはHigh echoで固定端的であり、しばしば、鏡像(きょうぞう)を作り出すことが知られている。このため読影(どくえい)や、これに基づく穿刺(せんし)治療の際には虚像(きょぞう)である鏡像のほうに穿刺針(せんしばり)を刺してしまわないように細心の注意が必要となる。

両端が固定端の場合には超音波の反射のラリーがはじまるため、合わせ鏡よろしく、多重(たじゅう)反射が生じることになる。超音波診断の際に超音波ゼリーを体表に塗布(とふ)するのは体表と超音波プローブの間を生体の主成分である水と近い音響インピーダンスの音響ゼリーで満たすことで、プローブと患部の間の接触不安定化による空気層の流入を防ぎ、生体への音響ウインドウを安定的に確保することが目的である。

(参考文献)
鈴木洋一ほか,音響学入門,コロナ社.



超音波診断・治療と音波の可到達性(かとうたつせい)

超音波治療においては、治療用超音波の臓器内に埋め込まれた患部への可到達性について考慮する必要がある。具体的に、(その表面に痛みを感じる痛覚の多い)肋骨などを避けて呼吸や拍動等によって能動的に運動する臓器内に埋め込まれた患部へと超音波を安全・安心・安定的に思いやりをもって送達(そうたつ)できる必要がある。

この際、強度の違いこそあるものの治療用超音波も診断用超音波も同じく超音波であることが利用できることに着目されたい。すなわち強度の小さな診断用超音波の患部への可到達性(かとうたつせい)が超音波画像上でうまく評価できれば、強度の大きな治療用超音波を安全・安心・安定的に思いやりをもって患部へ送達する経路をさぐるためのシミュレーションに資(し)するところ大であろう。このことを踏まえて、具体的に下記のようなことが検討できるであろう。

(検討1)音響陰影の存在⇒肋骨や結石など、浅部の固い組織によって超音波が透過できないので、深部に超音波が到達できず、音響シャドウができる。超音波の可到達性の観点から深部に病変が存在する場合には超音波治療における音波の送達経路として不適である。これに関してConfidence mapという画像処理技術を用いると音響陰影を検出することが可能である。Confident(確信度の高い)US画像を生成するうえでも、confidence mapは重要であろう。

(検討2)プローブと患部との接触力が音波の送達経路に与える影響についても検討が必要である。プローブと患部の接触状態が悪いと診断および治療用超音波は体表の音響ウィンドウから体内へとうまく入ってゆけない。また、脂肪層のぶ厚い患者さんでは、医療専門家はプローブを強く押しつけて、脂肪層をできるだけ縮退(しゅくたい)させ、超音波の透過性を高めて、診断画像をしっかり、くっきり、はっきりさせている。換言すれば、接触力をうまく制御することで、超音波治療における音波の送達経路や送達性を高めることが可能であろう。

(検討3)浅部の脂肪層と筋層との界面での音響反射によって深部の透過超音波量が散乱(さんらん)・減衰(げんすい)して、オーロラのような『すだれ状のエコー』が発生する場合がある。このような状況は超音波の可到達性の観点から深部に病変が存在する場合には超音波治療における音波の送達経路として不適な可能性があり、注意を要する。上記の『すだれ状のエコー』は肝臓の線維化を評価する際の重要なサイン・目印となっている。

(検討4)横隔膜による鏡像の存在⇒病変部位が横隔膜(鏡面)による鏡像(虚像)である可能性があり、超音波治療においては特段(とくだん)の注意を要する。

上記の(検討1)および(検討2)に関して、音響陰影やプローブと患部の接触状態の悪さ(Bad contact)は医用画像の観点から輝度値の信頼性の低い点を生じてしまう。換言(かんげん)すれば、医用画像の観点から輝度値の信頼性の高い点の密度が疎な領域(落とし穴、ブラックホール)を生じてしまうという問題点がある。

このため空間(超音波画像)内の任意に選んだ2点(たとえば音波の経路上の2点)を結ぶ任意の曲線のつながり(数学の言葉でいうと単連結(たんれんけつ)性)において、その連続性やなめらかさを確保するうえで、ややもすると上記の疎な領域(落とし穴、ブラックホール)に診断あるいは治療用超音波が吸い込まれて出られなくなってしまうのではないかという危惧(きぐ)が生じてしまい、このような状況は、たとえば病変の見落しなど、安全・安心・安定的でおもいやりの医療を提供するうえではやはり問題である。




摂動的なノイズ処理問題

HIFU照射にともなう気泡ノイズ,紛らわしい組織,画像エイリアス,スペックルノイズなどの存在により,実際のターゲットの位置同定部$O(s)$が掻き乱されるという意味で,本システムは摂動的なノイズ処理問題を有する.この問題を解決するためには,機構,制御,ならびに画像処理アルゴリズムによる総合的な追従ロバスト化の取組みが必要となる.

具体的に,位置同定部のモデルとして,まず,ステレオの超音波画像入力から追従ターゲットの位置を出力する理想的なモデルが考えられるが,実際のシステムは,上記のノイズ要因のためにモデル化誤差$\Delta_o(s)$を含むことになる.


O(s) = O_m(s)+\Delta_o(s)


たとえば,紛らわしい組織を誤認識した場合,$\Delta(s)$は本来のターゲットの位置$r_t$を紛らわしい組織の位置$r_n$に変えてしまう.いま,紛らわしい組織を一定の割合$w_2$で誤認識するものとすると,両者の間で振動する目標値入力をシステムに与えてしまう.このため,本来,$r_t$を目標値入力とするべきところを,システムは振動しながら,本来のターゲットの位置$r_t$と紛らわしい組織の位置$r_n$に対して,認識の割合($w_1, w_2$)で重みづけられた位置$r$を確率的な目標値入力として追従してしまうことになる.


E[r]=w_1 E[r_t] + w_2 E[r_n]

w_1 + w_2 =1

\Delta r = r_t  - r_n


とくに,\Delta rが大きな場合には,超音波プローブに視点の変化をもたらし,このことが,さらなる追跡対象の位置同定誤差をもたらすという,負のスパイラルに入る.



振動抑制問題


高速・高精度が要求される分野においては,システムの振動抑制は大きな問題となっている\cite{2007nano-scale-servo:TYamaguchi}.これは,手先の高い精度が要求される,医療機器分野においても同様である.

音響インピーダンス


z1,z2は,物質の音響インピーダンスです.音響インピーダンスは密度と音速をかけたもので,音の通しやすさをあらわしています.音響インピーダンスが大きく変化するところで反射がおこり,超音波画像上では,輝度が高く(白く)なります.
Rは音(圧)の反射率で,Rがたかいところほど超音波画像上で白くなります.
このことを式であらわしたのが,次式.
I_reflection^stone = \frac{R^stone}{R^bg}I_reflection^bg
R^bg:超音波画像上での背景の反射率
R^stone:結石の反射率
I_reflection^bg:背景の輝度値
I_reflection^stone:結石の輝度値

現在,筋断面や体肢の観察における界面エコーの低減を目的として,生体組織に近い音響インピーダンスを有する各種合成樹脂素材が探索・調査されている\cite{各種合成樹脂素材の音響特性}.


超音波画像上の距離と音響インピーダンス

超音波の生体中での音の伝わりやすさは媒質により異なる。一般に超音波画像は、水に近い音響特性(音速1530-40m/s)を有する軟部組織にあわせて超音波画像上での距離を調整しており、骨などの硬い組織では、超音波画像上での距離が実際と大きく異なる(硬い組織では音が伝わりやすいため、深度方向の距離が超音波画像上で実際よりも短く射影される)。

(参考文献)
[] 中本達夫, 血管穿刺・神経ブロックに必要な超音波ガイドの基本的知識①超音波の基礎知識, 日臨麻会誌, Vol.33, No.3, pp.443-448, 2013.

(コラム)

Q and A
(Q) (超音波診断用プローブと超音波治療用トランスデューサを一体化して組込んだ)ロボット先端部を水中に配置しているのはどうしてか?
(A) 患部までの超音波の経路を確保するため.人体の音響インピーダンスは平均的に水の音響インピーダンスに近いことをふまえて,人体とインピーダンス・マッチングの良い水で患部までの超音波の経路を確保している.

3.x 呼吸による腎臓の動作解析


(参考文献)


[] van Breugel J, Wijlemans J, Vaessen H, de Greef M, Moonen C, van den Bosch M, Ries M, Procedural sedation and analgesia for respiratory-gated MR-HIFU in the liver: a feasibility study,

Journal of Therapeutic Ultrasound 2016, 4 :19 (29 July 2016)

Background: Previous studies demonstrated both pre-clinically and clinically the feasibility of magnetic resonance guided high-intensity focused ultrasound (MR-HIFU) ablations in the liver. To overcome the associated problem of respiratory motion of the ablation area, general anesthesia (GA) and mechanical ventilation was used in conjunction with either respiratory-gated energy delivery or energy delivery during induced apnea. However, clinical procedures requiring GA are generally associated with increased mortality, morbidity, and complication rate compared to

procedural sedation and analgesia (PSA). Furthermore, PSA is associated with faster recovery and an increased eligibility for non- and mini-invasive interventions.

Methods: In this study, we investigate both in an animal model and on a small patient group the kinetics of the diaphragm during free-breathing, when a tailored remifentanil/propofol-based PSA protocol inducing partial respiratory depression is used. Subsequently, we demonstrate in an animal study the compatibility of the resulting respiratory pattern of the PSA protocol with a gated HIFU ablation in the liver by direct comparison with gated ablations conducted under GA. Wilcoxon signed-rank tests were performed for statistical analysis of non-perfused and necrosed tissue volumes. Duty cycles (ratio or percentage of the breathing cycle with the diaphragm in its 
resting position, such that acoustic energy delivery with MR-HIFU was allowed) were statistically compared for both GA and PSA using student’s t tests.

Results: In both animal and human experiments, the breathing frequency was decreased below 9/min, while maintaining stable vital functions. Furthermore an end-exhalation resting phase was induced by this PSA protocol during which the diaphragm is virtually immobile. Median non-perfused volumes, non-viable volumes based on NADH staining, and duty cycles were larger under PSA than under GA or equal.

Conclusions: We conclude that MR-HIFU ablations of the liver under PSA are feasible and potentially increase the non-invasive nature of this type of intervention.

3.x カルマンフィルタ
よくあるカルマンフィルタの適用例を以下に示す.

観測されるのは,位置である場合が多い.

c^T=[1 0]
位置センサはついているが,速度センサはついていない状況を仮定しているため,これらの状態変数のうち,位置のみしか測定できない.

位置を測定するとき観測雑音が混入する.



状態空間表現の係数行列{A,b,c}は既知であると仮定する.


力学システムのフィルタリング問題

力学システムを記述する状態空間表現の係数行列・ベクトル{A,b,c}が既知である.すなわち,システムのダイナミクスが既知であるという仮定のもとで,雑音に汚された位置の測定値y(t)から,状態変数x(t)(すなわち,位置と速度)を推定すること.

下記の等速直線運動の状態方程式がよく用いられる.


等速直線運動:

x_1(k+1)=x_1(k)+x_2(k)
x_2(k+1)=x_2(k)



予測ステップ:


(コラム)

ベイズの定理により,ある値がこれこれの範囲に具体的にどのような確率で存在するかを評価することができる.

ベイズの定理にもとづくカルマンフィルタは,これこれの範囲内にターゲットである結石あるいは腫瘍が存在する確率を与えてくれる.本研究においても現実的な問題として,このようなあるい範囲内での患部存在確率情報にもとづいて患部の位置を最尤位置として同定し,これを抽出・追従・モニタリングするアルゴリズムを構築してゆくべきであろう.


患部の存在確立にもとづいて、治療器具を誘導する研究として,Thienphrapaらの研究がある。


[] P.Thienphrapa, A.Popovic, R.H.Taylor, Guidance of a high dexterity robot under 3D ultrasound for minimally invasive retrieval of foreign bodies from a beating heart, 2014 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA), pp.4869 - 4874, 2014.


(コラム)

先日参加したJSTU2013という会議で,松本洋一郎先生が『中小企業とベンチャー企業はそのマインドセットにおいて異なる』,『失敗した人はエライと評価するベンチャー精神の重要性』を畑村洋太郎先生が提唱する失敗学を引き合いに出して説いておられ,深い感銘を受けた.

これを踏まえて,自分なりに失敗について考えてみた.


失敗の構造を解き明かし,これを踏まえて,成功を目指して機能構造を改良して再挑戦する姿勢,勇気を振り絞って何度でも,成功するまでトライアンドエラーを繰り返すというプロセス重視の姿勢、そしてこのための不断の努力こそがベンチャー精神の真骨頂であり,イノベーションの本質に迫りうるものであろう。


To try and error is great yamato-spirits so as to succeed.


肝臓の超音波診断


造影超音波技術を用いて腫瘍付近の血流評価を行なうことで、超早期段階での腫瘍発見が可能になりつつある[]。


USとCTの融合画像により、肝がんの超音波診断の簡便かつ高精度化が進展している[]。


(参考文献)

[] K.Numata, et al., " Contrast-enhanced ultrasonography findings using a perflubutane-based contrast agent in patients with early hepatocellular carcinoma," Eur J Radiol. 2014 Jan;83(1):95-102.
[] H.Fukuda, et al., Usefulness of US-CT 3D dual imaging for the planning and monitoring of hepatocellular carcinoma treatment using HIFU, Eur J Radiol. 2011 Jan;80(3):306-310.

超音波診断装置

視野角
視野深度
ズーム

呼吸動による変形
呼吸動によって臓器や血管は変形するが、その属性により変形の大きなものと小さなものがある。代表的なものを以下に挙げる。下大静脈については呼吸動による変形が大きいことを逆手にとって循環血液量の評価に利用されている。

肝臓:呼吸動による変形は比較的大きい
腎臓:呼吸動による変形は比較的小さい

下大静脈:呼吸動による変形は比較的大きい
腹部大動脈:呼吸動による変形は比較的小さい

医用画像のコントラスト
一般にコントラストが小さい医用画像では、病変を抽出しにくい。これに対して前処理をおこなってコントラストを向上する方法が提案されている。たとえばハウンズフィールドスケールを用いた画像のコントラスト向上手法などが提案されている。のっぺらぼうやゲゲゲの鬼太郎のぬりかべしかり、勾配の少ない画像は特徴量が抽出しにくく、識別しにくいのが難点である。

(参考文献)
Varma, V., Mehta, N., Kumaran, V., & Nundy, S. (2011). Indications and contraindications for liver transplantation. International journal of hepatology, 2011, 121862.

ロボット機構部の振動
ロボット・アーム(リンク)には駆動軸をはじめ、弾性要素が少なからず存在し、これがメカニズム全体の剛性を低下させ、振動を引き起こす原因となっている。この問題を解決するためには剛性の高いマニピュレータをつくる必要があるが、つねに軽量化との両立(トレード・オフ: trade off)が技術課題として存在している。これは医療ロボットにおいても同様である。内視鏡ロボット機構など、柔軟性を求めらる機構には軽量化と剛性のトレード・オフ、振動の問題はつきものである。

(参考文献)
内山 勝,中村仁彦,ロボットモーション,岩波書店.

電磁気によるノイズ
電磁気によるノイズが超音波画像上に波紋状に映り込むことがある。医療用に用いられるX線やガンマ線、赤外線、可視光、紫外線も電磁気の一種である。真空中では電磁波の伝搬(でんぱん)速度は波長に関係なく一定で、その値は光速c=2.99792×108m/sである。


『伝搬(でんぱん)』と『伝播(でんぱ)』は同様の文脈として用いられることが多いが、その読み方の違いには注意が必要である。『伝搬』は元々は誤字であり、正式には『伝播』が正字である。 しかしながら、時代の変化と共に『伝搬』が広く定着し、現在は一般的に使われるに至っている。『伝搬』より幅広い意味が『伝播』には込められており、次々に伝わり広まる、波や音波などの広がり、文化人類学用語として二つの異なった文化が融合し合うといった意味がある。

電磁気によるノイズ対策方法

超音波ファントムのジェルを多めにぬって、そこにアルミホイルでグルグル巻きにしたプローブのケーブル線をたらすとノイズが減少することがある。プローブケーブルづたい、ファントム(上のジェル)経由の電気閉回路ができ、その回路のほうにノイズを含む電流が誘導され(並列回路で低いインピーダンスの回路に電流が誘導される、オームの法則ですね、、、)、うまく逃げてくれると、その回路をぐるぐるまわっているうちに電力消費されるため、同時にノイズの影響が低減するメカニズムではないかと推察される。言わば『ノイズの避雷針』、ストーカー(つきまとい)対策とも相通じるところがありますね、、、

フェライトコアは外部にノイズを漏らさないようにするためのものであり、信号線を外部ノイズから保護するものではないことには注意を要する。フェライトコアはノイズの発生源近くに装着すべきである。大容量データを高速伝送するインタフェースケーブルは、ノイズの発生源かつ侵入口となっているのでフェライトコアによるノイズ対策が有効であることが多い。

(参考文献)


マクスウェル方程式

電磁気においてニュートンの並進運動方程式やオイラーの回転運動の方程式に対応する基礎方程式がマクスウェル方程式である。

マクスウェル方程式の意味と覚え方:







拍動呼吸動

流体や気体は圧力の高い方から低い方へ流れる属性がある。具体的にホースやスポイトをつまめば真空状態を容易に作り出すことができる。ホースやスポイトをつまんである領域から空気を追い出し、ホースやスポイトのもつ復元力(弾性)によって周囲と比較したときの陰圧領域をつくることで、そこに周囲の流体を引き込む(アトラクトする)のである。動物がジャンプする前にいったん膝を曲げるのと同様に、ホースやポンプの弾性エネルギーを解放して、流体や気体の運動(流れ)へと変換しているのである。心臓によるポンプの原理も同様である。心筋を用いて、陰圧状態をつくり、そこに血液を引き込む形で、血液の流れを作り出している。呼吸動の場合も同様で、横隔膜(筋膜)をもちいて肺の体積を大きくして陰圧を作り、そこに外気を引き込むことによって息を吸っているのである。同時にこの横隔膜(筋膜)の運動が、腎臓や肝臓といった腹部臓器の運動を作り出している。

レンツの法則